
風化を知らないソウルの傑作
88年発表ながらこの小西・高浪・田島3氏の新感覚で洗練されたフィラデルフィア・ソウルは今も普遍的な甘美さがあると実感します。例えば極めて緩やかなスピードで孤を描いてゆくレガートの心地よさや、漂うような綺麗なサウンドは非常に優れていますし、何より田島氏の清潔感ある歌声は音と言葉に透明感を与え、日本語歌詞のソウルが品を保っています。エロスでさえ。その結果この音楽が動き出すとスイートソウルの儚い輝きがとても美しく鳴り始めるんです。
しかし当時は汗知らずスーパー・スイート・ソウルというキャッチコピーに代表されるこのアーバンテイストがミュージックマガジンや山下達郎から批判され、中身が無い等と評されていたようです(田島氏と達郎氏はその後仲良くなるようですが)。ソウルを愛するゆえの辛口でしょうが、ソウル音楽の原理主義に捉われたやっかみもあったのではないでしょうか。
でも今作は仏像を作ってしっかりその土地の魂が入れられていると思いますよ。ソウル音楽が東京という近未来都市に上陸し展開される上で、相応しいスマートで若く知的な感性が詞にもドライなサウンドにも描かれているからです。9「これは恋ではない」のシニカルな世界なんて当に。
また田島氏の空気に溶け込んでゆく無垢でしかし深遠な歌声は日本人の繊細な心によく映えます。これはスイートソウルに大切な甘美さという点から言えば、R&Bのハートを理解している達郎氏よりも先天的なドルチェを備えた声だったのではないかと思います。田島氏は努力した声だと言っていますが。また4「ワールド・スタンダード」など田島氏の助詞を引いて余韻を醸す歌い方は素晴らしく上手いですね。ここでの経験が歌い手としての自覚を高めたそうです。ちなみに5「カップルズ」は高浪氏のVo.。
作詞小西康陽・作曲田島貴男による冒頭3曲「惑星」「誘惑について」「聖三角形」の心地よさは極上ですよ。

2人の才能の萌芽
オリジナルラブではソウル魂の入った男っぽいヴォーカルを聴かせる
田島氏が、線の細い声で歌う。
今では、本格を選んだ田島氏とフェイクを追求する小西氏の若き日の接点。
薄い表面に潜む2人の才能の萌芽。

ピチカートがピチカートらしくなるためのマイルストーン
小西氏が『このアルバムは失敗作だ』と言ったらしい。
何が失敗なのか?つまりこのアルバム以降露呈する『編集』と『ユーモア』。この二点がbellisimaには存在していない。
つまり極度の作品至上主義なのである。
こうなってしまった理由は
☆田島貴男加入に伴い、方向性が全く見えていない状態で模索の中完成されたアルバムであった。
☆アナログベースで作られた最後のアルバム。つまりA面とB面があり、それをベースに作られたということは必ずドラマツルギーが存在している。
以上が大きな理由ではないでしょうか?
しかしそれを差し引いても魅力ある楽曲の数々。
ジナラブがジャズに傾倒した1STや2NDに大きな影響を与えているような気がします。
厳密に言えばソウル:ファンクベースの楽曲ばかりですが、いろんな意味で『折衷』されまくったアルバムではないかと思います。

まさに『聖三角形』・・・究極のトライアングルが光り輝く!
小西康陽と高浪敬太郎に田島貴男!ソニー時代の黄金の作品です。★まず、ジャケットが素晴らしい!★気持ちが昂ぶります!そして、田島貴男の甘いボイスがそれぞれの楽曲にピタリとシンクロ!(みごとなシナジーが展開されています)その日、その時・・・聴く瞬間の心持ちで響いてくるものが変わってくる不思議な音空間が、そこにはあります。・・・僕の耳の傾向として、あまり歌詞は聞こえてこないのですが、「日曜日の印象」での命を絶つ為にバスルームにこもる主人公とか・・「これは恋ではない」での「これは恋ではなく、ただの痛み・・・」なんてサラリと唄わせてしまう小西さんの作るワールドにドップリとはまり込んでしまった次第です。★いま聴いても・・・いいものはいつまでも・・・素敵なトライアングル★

やっと再発!
90年代半ばケチって買わずにいたところ、その後店頭でパッタリ見なくなりました。amazonでも探していましたが、見つからず己のケチさを嘆いていましたが・・・久しぶりに検索してみたらあるじゃないですか!田島貴男ではピチカートが一番好きで、ピチカートでは田島貴男が一番好きです。あくまで個人的にですが、この組み合わせが一番魅力が際立っている気がします。あわせて、月面軟着陸も購入したいところです。